第2章 演練
「それにしても主よ」
「ん?なんだ?」
「髪の毛がまだ濡れているじゃないか。駄目だぞ、ちゃんと乾かさないと。」
「いいんだよ、俺短いし」
「だーめーだ。そうやってもし体調でも崩したらどうするつもりだ。」
「そんな柔じゃねぇって」
鶴は心配性だなぁ、と男は笑う。
心配されるのはあまり好きではないが、それが好きな人からのものとなると変わってくるのだから何とも現金なことだ。
男はソファに腰を下ろし、緩む頬を抑えることもせずもう一度タオルで髪を拭く。
「わかった。俺が乾かしてやろう。」
鶴丸国永は、まるで名案だと誇らしげに言う。
男はそれに、豆鉄砲をくらった鳩のような顔をした。
「は?」
「ちょっとそこで待っててくれ」
そう言うや否や鶴丸国永は何処かへと消える。
いや、多分ドライヤーを取りに脱衣所へ行ったのだろうが。
初めて刀剣たちにドライヤーを与えてやった時は、初めて目にするものに皆驚いていた。
それは鶴丸国永も例外ではなかった。
始めの何回かは、いやはやどらいやーとやらは本当にすごいなぁ、などと関心していたが、今じゃすっかり慣れたようで乱の髪の毛をブロウしてやる程の腕前だ。
どこの美容師だよ、と突っ込みたい。