第2章 演練
湯殿で心身ともに癒され、男はタオルでがしがしと頭を拭きながら居間へと向かう。
居間にはもう誰もいないと思っていたが、そこには灯りがついておりテレビの音もする。
まだ起きてるやつがいるのか、と男はテレビの前に置かれているソファに向かった。
後ろから覗き込むようにすれば、そこにいたのは鶴丸国永であった。
男はどきりと脈打つ心臓をなんとか落ち着かせ、鶴、と声をかける。
「おお、主か」
「まだ起きてたんだな」
「何だか眠る気分になれなくてな。酒を飲もうかとも思ったんだが止めておいた。」
鶴丸国永はフローリングの上に腰を下ろし、ソファに凭れかかる状態で言う。
男の視界にあるふわふわと柔らかそうな髪の毛が、酷く魅力的に見えた。
男は手を伸ばそうとしていたのに気づき、慌てて抑える。
「主は今湯殿から上がったのか?」
「ああ」
男は鶴丸国永の頭らへんを、ぼうっと見つめる。
男の思考を占めるのは、鶴丸国永ばかりだった。