第2章 演練
それにしたって解せないのは、男も説教されたということである。
俺笑わなかったのに、とは男の言い分だ。
まだ僅かに痺れている足を伸ばしながら、肩をもみほぐす。
暫くぼうっとしていると、お風呂上がりの薬研藤四郎が男の肩を叩いた。
「大将、あんたも風呂入りな。疲れてるだろ。石切丸の旦那たちも出た頃だから、ゆっくり浸かるといい。」
「そうする。」
「俺っちはもう寝る。鶴の旦那のせいで流石に疲れた。」
「それもそうだ。おやすみ、薬研」
「ああ、おやすみ」
くあり、欠伸をした薬研藤四郎は確かに眠そうだ。
足取りこそはしっかりしているが、その目はとろんとしていた。
寝室へ向かう薬研藤四郎を見送ってから、男は湯殿へと向かう。
そういえば、と男は端のほうに置かれているパンティを手に取った。
これをずっと置いておくわけにもいかず、かといって捨てるのもどうかと思うので、今度政府へ用事がある時に届けに行くことにした。
男は台所へ行くと、ジッパーつきのポリエチレン袋を取り出しその中へパンティを入れ、しっかりジッパーをしめる。
やっと静かになった仮本丸の季節は夏に設定されている。
本丸が春なので、夜に虫の鳴き声が聞こえるのは些か新鮮だ。