第12章 終幕
男はそこでふと、宴会の輪の中に鶴丸国永がいないことに気づく。
全員があの場にいるわけではないが、鶴丸国永が席を外すとは珍しい。
そうして不思議に思っていると、誰かが男の右肩を叩く。
振り向けば、視界の端に白が一瞬映った。
しかしそこには誰もおらず首を傾げていれば、次は左肩をつつかれる。
短刀の誰かか、と思って左を向けばやはり無人。
と思ったのも束の間。
「わっ!」
さっき振り向いたときにはいなかった右側から、鶴丸国永が声を上げた。
男は不意打ちに肩をびくりと揺らして、目を丸くした後へにゃりとそのかんばせを綻ばせた。
「つるかぁ」
「はは、驚いたか?」
鶴丸国永は男の反応に満足気に笑うと、その隣に腰を下ろす。
「主は混ざらないのか?」
「ん、あそこにいたら潰されそうだし。そういう鶴はいいのかよ?」
男が問えば、鶴丸国永はにぃと笑った。
「今ならふたりきりになれると思ってな」
抜けてきた、と言って、鶴丸国永が肩を揺らす。
男は一瞬の間をおいて顔を赤く染め上げた。