第11章 閑話休題:鶴丸国永
「あれは、その…、きみが三日月と口吸いをするから…」
言ってから、鶴丸国永は顔が熱くなるのを感じて口元を手で隠した。
じいと自分を見つめる男が視界の端に映る。
数秒おいてぶわりと染まるかんばせに、鶴丸国永は更に恥ずかしくなってもう俯くことしかできない。
これはないだろ、情けすぎるだろ。
口吸いに嫉妬したって、それであんなことを口走ったなんて。
俺は子供か。ああかっこうわるい。
「…つる」
不意に、震える声で男が呼ぶ。
「なんだ?」
鶴丸国永は、できるだけ平然を装って先を促した。
「もういっかい、好きって言って」
ぽすん、と男は鶴丸国永にもたれ掛かってそう言った。
鶴丸国永はそれに僅かに驚きながらも、男の髪を梳きながらもう一度主の望む言葉を口にする。
「好きだ」
「もういっかい」
「好き」
「もっと」
「好きだよ」
「まだ、足りない」
まるで、今までをうめるかのように。
鶴丸国永が男の要望に応えるように好きだと口にすれば、男はまだ、もっと、と更に強請ってくる。
きゅっと控えめに鶴丸国永の着物を掴むその動作が愛らしくって、鶴丸国永は額にキスを落とした。