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とうらぶっ☆

第11章 閑話休題:鶴丸国永



「あっ、」

とん、と男の背中が壁に当たって、いつかと同じ状況になる。
男の声に、鶴丸国永は一瞬だけ意識を机の上に向けた。
そこには僅かに溢れたお茶。
机の上にできた小さな水たまりに向いたままの男の意識を、自分に向けて欲しくて男の頬へと手を伸ばす。
触れたその頬は、温かい。
己の冷たい掌へとその熱が移ることが、くすぐったさをもたらし、同時に胸を満たした。

びくりと男が肩を揺らし、鶴丸国永へと意識を向ける。
一度見開かれた瞳がゆらゆらと揺れ、光の反射のせいなのか、鶴丸国永にはそれが泣く一歩手前のように思えた。

そんな主が、やっぱりどうしたっていとおしくって、守ってやらなければと思う。
それまで頭の中にあった悩みとかが本当にどうでもよくなって、ただただ好きという気持ちで胸がいっぱいになる。

「好きだ」

用意していたものではない。
ぽろりと口から滑り落ちたそれは、鶴丸国永の気持ちを凝縮したものだった。
鶴丸国永は男が目を見開いて固まるのもお構いなしに、もう一度口にする。

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