第11章 閑話休題:鶴丸国永
「そんなに怯えないでくれ」
優しい声だった。
けれどそこに僅かに怯えの色が潜んでいて、鶴丸国永は自身を情けなく思う。
なにに怯えているのだろう。
そんなもの、分かりきっている。
主に拒絶されるのがこわいのだ。
散々拒絶するようなことを言っておきながら、いざ自分がその立場になるとこうだ。
かっこう悪いにもほどがある。
「…いや、俺のせいか」
少しの沈黙にも耐えられなくて、そう独りごちた。
参ったな、と小さく呟いて、鶴丸国永は頬を掻いた。
「……すまん」
鶴丸国永は、少しの沈黙を置いて謝罪を口にする。
「きみを、たくさん傷つけた」
「…………」
「あんなこと言うつもりなんてなかったんだ。人の心というものは、厄介なものだな。」
そこまで言って、鶴丸国永は男のすぐ隣に移動した。
男が後ずさって、その動きで腕が机に当たる。
がたん、と案外大きな音とともに、机の上に置かれていた湯呑みが揺れて机を濡らした。