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とうらぶっ☆

第11章 閑話休題:鶴丸国永



この部屋の主であるにっかり青江は、石切丸の部屋へ行くと言ったっきり戻ってくる気配もない。
ぐるぐるとどう切り出すか迷っていれば、正面でごそごそと動く気配がした。
どうやら、男が正座を崩した音らしかった。
男が正座から胡座へと体制を変え、凝った筋肉を解すよう動く様を見て、鶴丸国永は一気に己の緊張が和らいでいくのを感じる。
それは、もう逃げないからという一種の意思表示のようにも思えた。

鶴丸国永は、男の方を見つめる。
黒くて柔らかい髪、薄い唇、色素の薄い瞳。
そのすべてがいとおしくって、ぜんぶが鶴丸国永を惹きつけてやまない。

そうやってじっと見ていれば、鶴丸国永の視線に気づいた男と目があった。
ばちりと視線と視線が絡み合って、男は再び身を固める。

「主に、聞いてほしいことがあるんだ。」

静かに、鶴丸国永はそう言った。
男の瞳がゆらゆらと揺れる。
その瞳の奥に怯えの色を見つけて、鶴丸国永は胸が痛むのを感じた。
自身の纏う雰囲気や神気を、できるだけ柔らかくするように心がけ、小さく笑みを象った。
それでもなお、ゆらゆらと揺れる瞳に、鶴丸国永はこんなにも傷つけてしまっていたのかと今更ながら罪悪感と後悔に苛まれる。

恐れられるというのは、詰られるよりも辛いなあと心中困り果てた。
この人の子は、どうすれば怯えないでくれるだろうか。

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