第11章 閑話休題:鶴丸国永
ああ確かに俺が悪いさ。それは認めよう。
だが鶴丸国永にだって言い分はある。
薬研藤四郎が折れたその日、主のそばについていたのは誰でもない自分であるし、熱に浮かされながら行かないでと言った主にずっとそばにいると言ったのも自分だ。
これだけ言えば、いくら鈍いといえど気づくだろう!普通!
なのにあの主ときたら、気づく気づかない以前に覚えてないらしいのだ!
はあ?!である。
薬研藤四郎のときのあまりのショックでその辺の記憶が曖昧というのも、熱で意識が朦朧としていて覚えていないのも仕方ないと思う。
仕方ないとは思うけど、少しくらい覚えててくれてもいいんじゃないかとも思うのだ。
主がした二度目の告白といい、この間のことといい、あの男は肝心なことを覚えていないのだからタチが悪い。
先日のことだって、鶴丸国永はまだ根に持っている。
あの洗濯機ばかりが置かれた、男がらうんどりーるーむと呼んでいる部屋での出来事だ。
ようやく主とふたりきりになれたと思ったのに、主は主で鶴丸国永の着流しに顔を埋めているし、それに面食らいながらも逃がさないよう壁に追い詰め退路を塞いだはずなのに気づけば逃げられるしで、もうなんというか。
そう、とにかく散々だったのだ。
蛇足だが、自分が着ていた着流しに顔を埋めて名前を呼ばれたときは、恥ずかしさと堪らない気持ちでいっぱいだったが、それ以上に主がかわいくて仕方なかったというのはここだけの話である。