第11章 閑話休題:鶴丸国永
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最近、主に避けられている。
それはもう、これでもかと言うほどに。
心当たりならある。
薬研藤四郎が折れる前夜のあれだ。
主を寝酒にでも誘おうとして、ついでに主の部屋へ向かう途中に出会った薬研藤四郎も誘い、男の部屋へ行った時のこと。
部屋へ行けばなんと、主である男と三日月宗近が接吻をしていたのだ。
いまであればあれは事故だと言い切れるが、あの時は頭に血が上ってだめだった。
初めて感じる、強烈な感情。
怒りと、じりじりと何かを焦がすような痛みが胸を襲って、ついあんなことを口にした。
あれは嫉妬だ。
ひどいことを言った。
そのことを、主はずっと気にしているのだろう。
自分だってあんなことを想い人に言われれば、暫く立ち直れない。
原因は分かっているのだが、それでもあの避けようはあんまりじゃないかと思う。
目が合えば逸らされ、声をかければそそくさと逃げられる。
こんな時に限って次に近侍が回ってくるのはまだ先であるし、なんとかふたりきりになろうと試みるも気づけばどこにもいないといったことがここ最近ずっと続いている。