第11章 閑話休題:鶴丸国永
堀川国広が出て行った部屋には、主である男の荒い息だけが響く。
ほんのりと淡い橙の蝋燭の灯りだけが主の寝顔を照らしていて、鶴丸国永はなんでかたまらない気持ちになる。
堀川国広の言った言葉は、まさに自分にだって言えることだった。
今まで、つい主の叫びを聞くまでは、知っているつもりでいたのだ。
けれど、ならばなぜ、主がこうなるまで気づかなかった。気づこうとしなかった。
知った気になって、あぐらをかいてはいなかったか。
舌打ちをしたい気分になって、ぐっとそれを堪える。
知らないということは、恐怖だ。
それを今回、ここにいる刀剣たちは身をもって知った。
思考に耽っていれば、男がいつも作業をこなす机の上に置かれたペットボトルの中身がほとんどなくなっているのが目に入った。
ここに来る前に持って来ればよかったな、と思って、寝ている今のうちに水を足しておくか、とペットボトルに手を伸ばす。