第11章 閑話休題:鶴丸国永
鶴丸国永は言葉に詰まる。
三日月宗近の言っていることは間違いではない。
たしかに、その通りだ。
皆が皆、主に対して何かしらよくない感情を持ち始めている。
鶴丸国永だって、そんなことには気づいている。
けれど、見てしまったのだ。聞いてしまったのだ。
主の泣き顔を、押し殺すような声を。
薬研藤四郎は折れたのだと、男が受け入れた瞬間を。
だから、どうしたって鶴丸国永は三日月宗近の意見に同意するわけにはいかなかった。
鶴丸国永が三日月宗近に同意すれば、男の立場は一気にあやふやで不確かなものになる。
それほど、いま男は危うい位置にいる。
たかが刀一振りととるか、刀一振りもととるか。
それは刀剣にとって様々であるし、中には刀で有る限り仕方がないというものもいるだろう。
「別に俺は薬研が折れたことが悪いと言っておるのではない。そのあとの主のやり方がまずいと言っておるのだ。」
「…主は人間だ。人というものは、いつだって間違える生き物さ。でも、そこから学ぶのもまた人間だろう。俺たちはそれを、千年も間近で見てる。」
「そうさなあ、たしかに鶴の言う通りよ。だが、何かあってからでは遅いのだ。今回のようにな。」
「…………」