第11章 閑話休題:鶴丸国永
「どうしたんだ?こんな時間に」
「俺はションベンだ。たまたま通りかかったら襖が開いてたもんだから、ついな。旦那は?」
「俺は主と呑んでいたんだが、途中で主が寝ちまってな。ちょうど、運んできたところだったんだ。」
「ふーん、そうか。俺っちはてっきり、大将に夜這いでもしにきたのかと思ったぜ。」
「は、はは…、いやあ、そんなことはしないさ」
「ならいいんだが。やるなら起きてる時にやってやれ。たぶん、大将は手放しに喜ぶぞ。」
「いや、だから…」
「くぁー、だめだ。ねみぃ。俺は寝る。おやすみ、旦那」
「え、あ、あぁ…」
なんだったんだ…。
薬研藤四郎は話すだけ話すと、ぺたぺたと足音を小さく鳴らしながら粟田口の大部屋へと戻って行った。
鶴丸国永はため息を吐いてから、未だ抱えっぱなしだった男を布団に横たわらせた。
ほんと、何してんだ。
天井を仰ぎながら、鶴丸国永は自分の行動にもう一度ため息を吐いたのだった。