第11章 閑話休題:鶴丸国永
鶴丸国永が男のもとで過ごすようになって1番初めに抱いた感想は、いい人間だなという何ともありふれたものだった。
男は刀を手荒に扱うことをせず、まるで同じ人間であるかのように接した。
しかし一方で、刀であることをきちんと理解し、刀の本分が何であるのかを忘れるようなことはしなかった。
一度、大倶利伽羅にいい主だなと、そう言ったことがある。
そうすれば大倶利伽羅は、普段はあまり変わることのない表情を柔らかくして、そう思うかと嬉しそうに言ったのだ。
鶴丸国永は、驚きと同時に胸に温かいものが込み上げてくるのを感じた。
大倶利伽羅と鶴丸国永は、かつて伊達家で二百年ほど時を同じくしたことがある。
いろんなところを転々としていた鶴丸国永の中でも、その頃の記憶ははっきりと残っていた。
だからこそ、知っている。
大倶利伽羅は根は優しい子でありながら、それでもそれを大っぴらにしたり、自分の感情を表に出すことはあまりしないということを。
そんな大倶利伽羅が、あんな風に微笑むのだ。
それだけで、鶴丸国永の主へと対する評価は上がった。