第10章 雪解け
ああ、恥ずかしすぎる。
男は赤い顔を更に赤くさせて、小さくなった。
言い訳をさせてほしい。
だって、一度目は確かに振られたのだ。
あの時は鶴丸国永が本当にそういう目で男のことを見ていたかったのだと断言できる。
そんな相手から別に好きと告げられたわけでもないのに、いきなり察せと言われたって鈍い男には無理な話だった。
「…つる」
「なんだ?」
「もういっかい、好きって言って」
ぽすん、と男は鶴丸国永にもたれ掛かってそう言った。
鶴丸国永はそれに僅かに驚きながらも、男の髪を梳きながらもう一度男の望む言葉を口にする。
「好きだ」
「もういっかい」
「好き」
「もっと」
「好きだよ」
「まだ、足りない」
鶴丸国永が男の要望に応えるように好きだと口にすれば、男はまだ、もっと、と更に強請ってくる。
きゅっと控えめに鶴丸国永の着物を掴むその動作が愛らしくって、鶴丸国永は額にキスを落とす。
男はようやくこれが夢ではないのだと確信すると、また出そうになる涙をぐっと我慢した。
鶴丸が、俺のことを好きだと言う。
俺の好きでたまらない鶴丸が、だれでもない俺のことを。