第10章 雪解け
「……じゃあ、なんで俺のこと軽蔑したんだよ」
今度こそ、鶴丸国永は言葉に詰まった。
聞かれるだろうとは思っていたが、あの時のことは今思い出せば恥ずかしくて出来れば言いたくない。
燭台切光忠に言わせればかっくよくない理由なわけであって、そんな側面を惚れた相手には見せたくないのだ。
けれどそれを答えないで男が傷つくのは本末転倒なので、結局は口を開くのだが。
「あれは、その…、きみが三日月と口吸いをするから…」
言ってから、鶴丸国永は顔は赤くした。
口元を手で覆っているが、赤くなっているのは隠せていない。
男にはばればれである。
そんな鶴丸国永を男はじいと見つめ、そらからぶわりとかんばせを染めた。
つまりは嫉妬である。
鶴丸国永の話を纏めるとこうだ。
男と三日月が口吸いをしていたから妬いた。
しかしそれほどの激しい感情は顕現されてから感じたことがなかったので、昇華する術も我慢することもできずに男に当たってしまったということらしい。
男はそこまで聞いて、ようやく薬研藤四郎が言っていた嫌いのむしろ逆の意味を理解して、恥ずかしさに震える。
つまり全てを察していた薬研藤四郎(恐らく山姥切国広や、あの様子だとにっかり青江も気づいていた)などからすれば、何を拗らせてんだこいつらというのが言い分なわけであって。