第10章 雪解け
愛しい気持ちが溢れだして、男は鶴丸国永に抱きつく。
「つる、好きだよ」
「ああ、俺もだ」
ああ、なんて幸福な。
すぐそばにある温もりを感じて、男は頬をほんのり染め、口元を緩めた。
どちらともなく目が合えば、そのまま自然に二人の距離はゼロになる。
重なる唇は熱くて、そこから溶けて混ざり合ってしまいそうだ。
触れるだけのキスは、それでも男の胸を幸福で満たした。
初めてでもないのに、心臓は馬鹿になってしまったようにうるさい。
唇が離れると、鶴丸国永のとろけるような笑みがすぐそばにあった。
どきりと胸が高鳴って、それからきゅうきゅうと心臓が締め付けられる。
男はもう、鶴丸のことがかっこよくて、きれいで、かわいくて、この世の言葉では表せないほど愛しくって、このまま心臓が止まってしまうんじゃないかと錯覚に陥る。
彼の存外大きな手が男の顔をすっぽりと覆って、きらきらと光る鶴丸国永の美しい瞳とかち合った。
「ははっ、真っ赤じゃないか」
「う、うるさいっ」
「そう怒るなよ」
くすくすと笑いながら、鶴丸国永は男の頬をむにむにと弄ぶ。
「きみは本当にかわいいな」
それはお前の方だ、と男は思う。
男に可愛いなんて嬉しくないはずなのに、鶴丸国永に言われると悪い気がしないのだから恋とは恐ろしい。
けれど言われっぱなしは癪なので、言い返そうと口を開いて、発しようとした言葉ごと鶴丸国永に呑み込まれた。
再び重なる唇に、男は手を鶴丸国永の背に回し、静かに瞳を閉じて受け入れるのだった。