第10章 雪解け
男はじわじわと遅れてやってくる理解に、目の奥が焼けるような錯覚を覚える。
ぼろ、と何かが頬を滑った。
一度溢れたそれは次から次へと溢れてきて止まることを知らない。
目の前にある鶴丸国永の顔がどうしようもなく歪んで、男の胸をこれでもかと締め付けた。
「ほんと、に…?」
ようやく発したのはそんな言葉で、おまけに声は涙で途切れ途切れ。
それでも鶴丸国永は男の声に耳を傾け、優しく指で涙を拭ってくれる。
「ああ、ほんとうだ」
肯定する声はどこまでも優しくて、男の心をまるごと包み込むように温かい。
男は流れる涙をそのままに、でも、と続けた。
「でもっ、」
「ん?」
「でも、いちごは…?」
ずび、と男の鼻をすする音が部屋に響く。
男の言葉に、今度は鶴丸国永が固まる番だった。
図星などではない。ただ単純に男の言っていることが理解できないのである。
どうして急に一期一振が出てくるのだろう。
怪訝そうな顔をしていたのだろうか、男が慌てたように、ほら、と続ける。
「つ、つるは一期のことが好きなんだろ?なのに、もう、いいのか?」
「んん?!」
男の説明に、鶴丸国永は驚く。
どうしてそうなるのだ。