第10章 雪解け
「や、やっぱ、避けてんのバレてるか…?」
「君は分かりやすいからねぇ。ここにいるものは皆気づいてるんじゃないかな。」
「え、みんな?!」
「そりゃああれだけあからさまだとね。それで?何でだい?」
むしろ何で気づかれてないと思っていたのか、にっかり青江からすればそちらの方が甚だ不思議だ。
さっきまで鶴丸国永から逃げるために思いきり走っていたというのに、あれが鬼ごっこで通用すると思っているのだろうか。
にっかり青江は男に答えを促すように、空いた湯のみにお茶を注ぐ。
ぐぬぬと唸る男の眉間をつつけば睨まれた。
「何でって、そりゃあ、おまえ、」
男はそこで区切って、再び黙り込んだ。
この先を言うべきか悩んでいるのだ。
しかしにっかり青江は答えるまで解放してくれる様子もない。
男はもうどうにでもなれと、やけくそに口を開く。
「俺が鶴丸を好きだからだよ」
ぶっきらぼうに言い放たれたそれは、にっかり青江も承知の事実だった。
だけどそれがどうして避けることに繋がるのか。
にっかり青江が思案していれば、男はお茶を飲んでから言葉を続ける。
「なんていうか…、その、酔った勢いで言っちゃったんだよ、好きだって…」
「それが原因?」
「うーん、原因の一つって感じかな」