第9章 思い出を辿る
小学生の頃は上から落ちて腕の骨を折ったこともあった。
来るたびに出来る新しい友達、遊具の取り合い。
中学生の頃は友人と学校帰りに訪れ、陽が落ちるまで駄弁っていた。
高校生になると、当時付き合っていた彼女とよく寄った。
大人になってからは、当たり前だが訪れる回数は大幅に減った。
それでも審神者になって一年が経った頃のこと、男は薬研藤四郎を連れてこの公園に来たことがある。
隣に座るへし切長谷部は黙っている。
ずっと思っていたが、その格好は暑くないのだろうか。
彼ら刀剣男士はこぞって体温が低い。
だから平気なのかもしれないが、見ているこちらは暑い。
男は手で扇ぎながら、蝉の鳴き声を聞く。
「主は、どうして今日俺を誘ってくださったのですか。」
不意に、へし切長谷部が口を開いた。
人がいなくなった公園は静かだ。
「…長谷部とは、一度ちゃんと話さなきゃなって思って」
へし切長谷部の問いに、男は姿勢を正して答えた。
男の言葉に、隣にある肩がびくりと動く。