第8章 崩壊
山姥切国広は、ずれ落ちてる布を被って今更だと小さく言った。
それから照れを隠すように、彼はさらに口を開く。
「加州が手入れをされたがってた。体調がよくなったら、してやってくれ。」
「ああ、分かった。…加州にも、ひどいことをしたなぁ。長谷部も、きっとまだ気負ってるだろうし」
「あの二振りは過去が過去だけに色々思うことがあるんだろう。飯はどうする?」
「だよなあ…。飯はそうだな、お粥が食べたい。」
「分かった。燭台切に言っておく。こっちで食べるか?」
「そうするよ」
それだけを聞き終えると、山姥切国広は一度大広間に戻るべく男の部屋を出て行った。
残ってるのは大倶利伽羅と男の二人だ。
流れる沈黙は静かで、だが決して嫌なものではなかった。
「…あまり、見くびるなよ」
その沈黙を破ったのは、大倶利伽羅だ。
声は僅かに怒気を含んでおり、男はそのことに多少なりとも驚いて、大倶利伽羅の方を見つめる。
「俺たちはそんな簡単に折れないし、あんたを一人になんかしない」
彼が苛立っているのは、男の抱える不安に対してだった。
大倶利伽羅は、静かにけれど決意のある声で続ける。
「だから、余計な心配はするな。もう、一人になろうとするな。」