第8章 崩壊
「それなら、いいんだが」
山姥切国広が呟けば、その場にいる刀剣たちは同意を示すように微笑む。
久方に感じる本丸の和やかな雰囲気に酔っていれば、布団を敷きに行っていた歌仙兼定が戻ってきた。
布団を敷いたことを本人に確認したところで、山姥切国広は加州清光から受け取った己の腕でぐったりしている男を運ぶために立ち上がった。
しかし立ち上がろうとしたところで、その腕を掴まれる。
誰だと思い振り返れば、それは鶴丸国永であった。
「俺が運ぶ」
堅い声で言われ、それだけで大体を察した山姥切国広は、何も聞かずになら頼むとその役目を譲った。
山姥切国広の手から渡った男は、鶴丸国永に横抱きにされている。
男を見つめる鶴丸国永の顔は、まるで何かを耐えるかのように強張り、その瞳は僅かに揺れている。
山姥切国広は、そのことに多少なりとも驚いた。
彼の大きな心の変化を目の当たりにして、落ち着かない気持ちに陥る。
それと同時に、男が、己の主が報われることを祈るのだった。