第8章 崩壊
「歌仙、主の部屋に布団を。平野、桶に水を汲んで手拭いと一緒に主の部屋に持っていってくれ。乱と一期は医務室から風邪薬があるか探してきてほしい。なかったら構わない。加州、長谷部を呼んできてくれるか。」
山姥切国広の指示にそれぞれが従い、その場所へ赴くために散った。
それを見届けてから、大広間に残っているものの顔を見て口を開いた。
「すまない。主に言いたいことがあるのは俺だけじゃないのに、一つ機会を潰した。」
頭を下げてそう言えば、まだ僅かに緊張を孕んでいた三日月宗近の目元がふわりと柔らかくなる。
三日月宗近の隣にいる石切丸は、肩を竦めた。
「構わん。皆言いたいことは一緒よ。」
「そういうことだ。何も君が責任を感じなくていい。むしろ皆感謝していると思うよ。」
「そうですよ!もしみかづきがいえば、あるじさまはこわがって、じぶんのほんしんをかくしてしまいます。やまんばぎりがいって、けっかおーらいというやつです。」
三条派が順番にそう言うのに、山姥切国広は肩の荷が降りるのを感じる。
あの時自分が言ったことに後悔はしていないが、そのせいで不満を解消できていない刀がいればと思っていたのだ。