第8章 崩壊
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その後は大変だった。
なかなか泣き止まない主を皆で慰め、ようやく落ち着いたかと思えば、男は加州清光にぐったりと身体を預けたまま気を失った。
騒ぐ加州清光に、山姥切国広がもしやと男の額に己の手をあてがう。
その手に伝わる温度に、山姥切国広は思わず手を引っ込めた。
熱だ。それも、ひどく高い。
男が熱を出したのは初めてではないが、ここまで高いのは初めてだ。
山姥切国広は、己の失態に舌を打つ。
どうして気づかなかった。気づけなかった。
よく見れば、目の下には濃い隈。
顔も数日前に比べ、細っそりとしている。
男も刀剣たちと向き合おうとしなかったが、刀剣たちもいかに男と向き合ってなかったのか思い知らされる。
ちゃんと顔を見たのだって、薬研藤四郎が折れてから初めてかもしれない。
「山姥切、主だいじょうぶなの?」
過去の自分を悔いていれば、加州清光を始めとする刀剣たちが心配そうにこちらを見ている。
「死にはしない。ちゃんと食べて寝れば治る。」
山姥切国広はそう言ってから、今自分にできることは何かと考える。