第8章 崩壊
「それがどうだ?!薬研は堕ちたんだ!敵に折られたわけでも何でもない!」
確かに、薬研藤四郎は敵に折られたわけじゃない。
自らの意思で、堕ちたのだ。
主を、男を、裏切ったのだ。
山姥切国広は、それでもと反論する。
「ちがう」
「何も違わないだろ?!」
「そうじゃない!あんたのそれはただの逃げだと言ってる!」
「うるさい!」
山姥切国広の言葉に、男は思わず手を出す。
ばちん、と乾いた音が響いた。
男が、思い切り山姥切国広の頬をぶったのだ。
するとそれまで口を出さなかった鶴丸国永が、男と山姥切国広の間に入って男の手を強く掴んだ。
「おい、いくらなんでも今のはないだろ」
その声はどこまでも低く、周りの刀剣男士たちも思わず身震いする。
「離せ」
「だめだ。君、今自分が何をしたか分かってるのか。」
「そのくらい分かってる。鶴丸どけ、今は国広と話してるんだ。」
「話してる?確かに最初に手を出したのは山姥切だが、それは君に目を覚まして欲しかったからだろう。だが君のは違う。ただの八つ当たりだ。」
男にも心当たりがあるのだろう。
鶴丸国永の言葉に、再び俯く。