第8章 崩壊
「いい加減にしろ!」
その叫びは、大広間中に響いた。
「薬研が折れて悲しいのは分かる!寂しいのだって知ってる!でも、なら、ここにいる刀たちはどうなる。あんたはいなくなった薬研ばかりを追いかけて、ここにいる刀の一振りだって見ちゃいない!」
山姥切国広はそこまで一息に言って、男の反応を待った。
こんなところで腐ってしまうような主ではないと信じていたい。
「…………だよ」
ようやく発せられた言葉は、あまりに小さくて聞こえなかった。
山姥切国広はもう一度言えと視線で促す。
男の顔は伏せられていて、それが通じたかは分からないが。
「…お前らに、何がわかんだよ!」
男は先程と同じ言葉を口にする。
それは山姥切国広が、ここにいる刀たちが、初めて目の当たりにした男の自分たちに向けられた鋭い程の怒りだった。
短刀たちが怯む。
一期一振は、その背をそっと撫でてやった。
「あの子は、薬研は!俺が初めて自分の手で鍛刀した刀だ!何年も一緒にいた!俺はあの子を信頼してたし俺だって信頼されてると思ってた!」
男は叫ぶ。
それは、男が薬研藤四郎が折れてからずっと考えていたこと。