第8章 崩壊
「加州くん!」
「堀川うるさい、黙ってて」
そんな加州清光の態度に苛ついて名前をきつく呼べば、加州清光はそれさえも突き放す。
「清光がそれ言うの?主に捨てられるのが怖くて、手入れさえまともに受けてないのに?」
言ったのは、蛍丸だった。
核心を突かれて言葉に詰まる加州清光に、蛍丸は更に畳み掛ける。
「輪を乱してるのだって、清光でしょ」
蛍丸は冷たい瞳で言った。
小さな身体でも、その威圧感に加州清光はたじろぐ。
これはさすがに、と思った燭台切光忠が仲裁するように間に入った。
「ちょっとちょっと、二人とも落ち着いて」
しかしそれも呆気なく、今まで口を開かなかった今剣が口を挟む。
「むりですよ、しょくだいぎり。」
それに続いてにっかり青江が言う。
「まあ、むりだろうね。」
二口の否定に、燭台切光忠も流石に苛ついてその顔から表情が消える。
成り行きを見守っているうちの一振りである歌仙兼定は、盛大にため息を吐きたくなった。
恐れていことが、こんなに早くくるなんて。
いやいっそ、早く来てよかったのかもしれない。
これ以上拗らせていては、逆に危険か。
だがなんでお前が煽るんだ、にっかり青江。
歌仙兼定は雅も忘れて思わず舌を打つ。
隣にいた山姥切国広だけがそれに気づき、彼は頭を抱えた。
三日月宗近や鶴丸国永、鯰尾藤四郎が静かに事の成り行きを見守っているだけなのも気になる。
乱闘沙汰だけは避けたい。
山姥切国広が頭を悩ませていると、カタンと音が聞こえて一同の関心はそちらに移る。
障子を開けたであろう人物は、主である男だった。