第8章 崩壊
「悲しいこと?そんなのいっぱいあるよ!薬研はいなくなるし、本丸のみんなはばらばら!主はボクたちのことなんてこれっぽっちも見てくれないし、なんにも気づいてくれない!」
それは恐らく、ここにいる刀剣全員が思っていることだった。
乱藤四郎の言葉に、幾らかが気まずそうに顔を逸らした。
「主にとって薬研はボクらとは違う特別なんだって、知ってたよ。だって主のことはずっと見てきたもん。」
乱藤四郎は続ける。
先程とはちがう、沈んだ声で。
「でもさ、じゃあ、ボクらはいつになれば主に見てもらえるの?」
想いが、こころが、そのぜんぶが、詰まった言葉だった。声だった。表情だった。
それは等しくも、全ての刀のこころに刺さる。
静まり返る大広間の中、加州清光が口を開く。
「仕方ないじゃんか。主だって、苦しんでるんじゃん。何で乱はそれが分かんないの。」
まるで乱藤四郎を非難するような言い方。
本人にそんなつもりはないのだろう、ただ主を庇っただけだ。
それでも、その言い方はどうかと思う。
堀川国広が咎めようと、肩に手を置く。
しかしそれは加州清光に振り払われた。