第8章 崩壊
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五虎退が、泣いた。
薬研藤四郎が折れてから、ずっと泣いていなかった五虎退が泣いた。
声をあげて、人目も憚らずに泣いた。
その姿に触発されたのか、次いで乱藤四郎が泣いた。
続いて平野藤四郎が泣いて、それを聞きつけた刀剣たちが大広間に集まった。
どうした、なんだ、と集まった面々は、へし切長谷部以外のこの本丸にいる全ての刀剣男士だった。
どうしたの、と堀川国広が優しく尋ねる。
それにも五虎退は首を振るだけで、なぜ泣いているのかが分からない。
一期一振の方を見ても、彼も分からないようで困ったように首を降るだけだ。
とりあえず慰めるのが先だと、一期一振や燭台切光忠を皮切りに泣きじゃくる三振りの背中を撫で落ち着くのを待ってやることにした。
そうして数分後、泣き止んだ三振りの目は赤く腫れ、なんとも痛々しいものだった。
保冷剤を布切れで包んで、目に当ててやりながら一期一振が問う。
「どうしたんだい?何か、悲しいことでもあったの?」
できるだけ優しく問うたつもりだった一期一振の言葉に、乱藤四郎が保冷剤を離しきっと睨む。
「乱…?」
戸惑って一期一振が名を呼べば、乱藤四郎は一期一振を睨みつけたまま口を開いた。