第8章 崩壊
飛び抜けて重症なのは、加州清光とへし切長谷部だ。
二口とも主に特に執着していたから、こうなるだろうなあとはなんとなく予測していた。
へし切長谷部は目の下に隈を拵え、その瞼は腫れていた。
死んでしまうんじゃないだろうか、と思わずにはいられない。
加州清光は出陣部隊に組まれることも少なくないのだが、怪我を負っても手入れ部屋に行かなくなった。
綺麗にしていた爪は今では見る影もない。
何も捨てられるんじゃないんだから、と何度思ったことか。
けれどそれも仕方ないことなのかもしれない。
彼らは一方はある時から直接の臣下ですらないものに下げ渡され、一方は折れて手放された刀だ。
それらは心の根底に貼りついて、トラウマとなっているのだろう。
分からないのは、鶴丸国永である。
そもそもあまり姿を見かけないし、見かけたとしてもその顔は無表情を貫いていた。
「どうもよくない方向に向かってるな…」
歌仙兼定が言えば、にっかり青江も頷く。
考えることは一緒だ。
誰もが抱える不安や不満が、いつ爆発するのか。
そのことばかりが、歌仙兼定は気がかりであった。