第8章 崩壊
「白状なんかじゃないさ。僕たち刀にとって、主に大切にされないということはある意味死をも意味するからねぇ。」
にっかり青江は、いつもと変わらぬ笑みでそう言う。
薬研藤四郎が折れて皆が戸惑い変わってしまった中で、にっかり青江だけは変わらずにそこにいた。
思えば、以前と何も変わらず男と接していたのもにっかり青江だけであった。
ぱちぱちと火が音を立てる。
小さくゆらめく炎を見つめながら、歌仙兼定はここ最近の刀剣の様子を思い返す。
山姥切国広は、ここ最近ずっと近侍を請け負っている。
今、出陣や遠征で指示を出すのは、専ら彼だ。
忙しそうに本丸を馳け回る彼は、何か胸の内に抱えているようだった。
大倶利伽羅は一見変わらぬように見えるが、時々苦虫を噛み潰したような顔をする。
彼は存外優しいから、もしかするとこの状況に一番心を傷めているのかもしれない。
粟田口の五虎退、乱藤四郎、平野藤四郎は目に見えて落ち込んでいたが、誰もが泣くであろうと思っていた五虎退は決して涙を見せなかった。
鯰尾藤四郎や骨喰藤四郎も然り。
彼らは強い。
それは戦闘におけることばかりではなくて、心という精神的なものもそうであった。
それでも、悲しそうに、苦しそうに唇を噛みしめるときがある。
歌仙兼定が好きだと思っていた笑顔は、もうずっと見ていない。