第7章 燃えて灰になる
「つる…」
その瞳は何も映していない。
これだけ疲弊してなお、男は薬研薬研藤四郎にかざす手を下ろそうとはしなかった。
あまり綺麗な手とは言えない。
逆剥けはあるし、深爪だし、女のような柔らかい手でもない。
けれども、鶴丸国永はそんな男の手が好きだった。
この手から与えられるものは、いつだって驚きに満ち溢れていた。
いろんな感情を貰った。
いろんなことを知った。
男が不器用なことも、自分たち刀のことを家族のように思っていることも、本当は大きな不安を抱えていることも、我慢しているだけで泣き虫なことも、鶴丸国永は知っている。
鶴丸国永は男の両手をそっと下ろさせた。
その手はいとも簡単に下ろせて、それがもう男の限界なのだと示している。
抱きしめる力を強めると、ぴくりと男の指先が動く。
鶴丸国永は彼の耳元で言った。