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とうらぶっ☆

第7章 燃えて灰になる



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男が折れた薬研藤四郎に霊力を注ぎ始めて、数時間が経過した。
霊力はもうほとんどなく、男の顔はこの数時間でやつれ疲弊していた。

本当は、分かっている。
いくら霊力を注いだって、彼はもう戻らないことなど。
それでも止められなかった。
だって、やめてしまえばその瞬間、男は薬研藤四郎はいなくなったのだと認めなくてはいけない。

頭がくらくらする。
当たり前だ、これだけ霊力を使えば。
もう数分もしないうちに、男は倒れてしまうだろう。
しかしそれは、男が霊力を注ぐのをやめる理由になどなりはしなかった。

不意に、手入れ部屋の襖が開く。
部屋に入ってきたのは鶴丸国永だ。

男はそれに気づかないフリをしながら、霊力を注ぎ続ける。
そんな男を見る鶴丸国永の顔といえば、悲痛に歪んでいた。
鶴丸国永は男の背後に立つと、あるじ、と小さな声で男を呼ぶ。
返事はない。
その姿を見ていられなくて、鶴丸国永は男をそっと後ろから抱きしめた。
ふわりと空気が動いて、男の冷え切った身体が鶴丸国永の温い体温に包まれる。
男の鼻腔がお日様の匂いを拾って、彼は鶴丸国永の方に顔を向けた。

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