第7章 燃えて灰になる
鶴丸国永は後悔した。
自分があんなこと言わなければ、ここまで男がショックを受けることはなかったのではないかと。
しかし言わなければ、あの時男の心が折れてしまっていたのもまた事実。
事態を理解した鶴丸国永が、堪らず男の手を掴む。
「主何をしようとしている」
「薬研を治すんだ。ひとりだけこのままなんて可哀想だろう?」
「っ、ちがう、もう、」
治らない。
治らないんだよ、主。
その先を口にするには、あまりに酷だった。
壊れかけている。
男はもう、考えることを放棄してしまった。
あまりの辛さに、目を背けてしまった。
でもそれを誰が責められようか。
男の心中を考えれば、誰にもそんなことはできなかった。
男は鶴丸国永に目もくれず、霊力を丁寧に薬研藤四郎に流していく。
しかしそれが折れてしまった刀に流れるはずもなく、ただ垂れ流し状態になっている。
いくら霊力の量が多い男とて、重傷中傷含め五振りの刀を直したばかりだ。
これでは男が倒れてしまう。
止めようとする鶴丸国永を、山姥切国広が止める。
「しばらくの間、好きにさせてやってくれ。」
彼が口にしたのは、珍しく男を甘やかすものだった。
その言葉の裏にある、最後くらい、を汲み取って、鶴丸国永は頷くことしかできなかった。
時間が経てば、男も理解せざるを得ないだろう。
それまで、せめて主の好きなように。
五口の刀は手入れ部屋をそっと出ると、男に指示されたことをこなすためそれぞれの場所に向かったのだった。