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とうらぶっ☆

第7章 燃えて灰になる



中でも一番衝撃を受けたのは、へし切長谷部だ。
泣かれるか、罵られるか、刀解されるか、折られるか。
その何れかを言われるのだと思い、こうして自ら刀解を申し出たというのに拍子抜けもいいところである。
ぽかんとするへし切長谷部に、男はもう一度笑いかけた。
無理した笑顔でも、作った笑顔でもない。
それは心の底からへし切長谷部を慈しんで浮かべている笑みだった。

男はへし切長谷部の右手を取り、立ち上がらせると布団の上に座らせる。
へし切長谷部は意味がわからず、思わず口を開いた。

「あるじ、怒っておられないのですか…」

男は刀を手入れする専用の用具を手にし、へし切長谷部の本体を治し始める。

「おこる?なんで?」
「え、いや、だって…、おれは、」
「手伝い札使うけど平気?」
「は、はい…」

へし切長谷部が続けるはずだった言葉の先は、男の言葉で遮られた。
普段なら最後まで話を聞いてくれる男に、その場にいたものは違和感を感じる。
誰もが声をかけるか悩んでいるうちに、へし切長谷部の治療が終わり、歌仙兼定の手入れが始まった。
手伝い札を使っているため、手入れはあっという間に終わる。
それでも誰も何も言えず、ただただ己の胸の内に巣食う違和感に首を傾げていた。

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