第7章 燃えて灰になる
男はへし切長谷部を見下ろす。
彼は、なにを言っているのだろうか。
なに一つとして、男は理解できなかった。
今分かっていることは、彼が、否。
彼らがひどい怪我を負っているということだけ。
そうだ、ああ、こんなにひどい怪我をして。
歌仙も、兼定も、三日月も。
早く手入れをしなければ、痛いだろうに。
誰もその場を動かなかった。
言葉を発さなかった。
物音さえ何一つしない部屋で、小夜左文字の寝息とへし切長谷部の不規則な呼吸音だけが聞こえる。
もしかしたら、泣いているのかもしれない。
慰めてやらないと。
男は片膝をついて、へし切長谷部の頭を撫でた。
へし切長谷部が顔を上げて固まる。
息がとまって、ぴくりとも動かなくなった。
男はそんなへし切長谷部を気にもとめず、驚くほど柔らかい笑顔を浮かべた。
「長谷部、傷が痛むだろう?手入れをしよう。国広、倶利伽羅、石切丸も、歌仙たちをそこに寝かせてくれ。」
男の声は、どこまでも穏やかであった。
この場にいるもの誰もが、取り乱すだろうと思っていたのに。
あまりの予想外の反応に、三口は遅れて指示に従う。
その顔はなんとも微妙なもので、三口はこの上なく主である男を奇妙な生き物だと思った。