第7章 燃えて灰になる
「敵の大将まで、後一歩というところでした。本能寺が焼けるのを見て、薬研藤四郎は堕ちたのです。」
誰も、なにも言わない。
へし切長谷部がなんの話をしているのか、一体誰の話をしているのか。
ここにいる誰も理解できなかった。
「薬研藤四郎は僅かに残った理性で自分を切ってくれと言い、そこであいつの理性はなくなりました。完全に堕ち、もう戻ることはないのだと。…薬研藤四郎と応戦、その後検非違使が出現。」
そこまで言って、へし切長谷部は息を吐く。
緊張からか、傷の痛みからか、額には汗が滲んでいた。
「薬研藤四郎との戦闘は、五人で応戦。和泉守も、三日月も、小夜も歌仙も、攻撃してくる薬研藤四郎に反撃できず。しかし、俺は違いました。主の、あなたの一等大切な刀だとしりながら、あれだけの月日を共に過ごしながら、なんの迷いもなく、切りました。」
息を呑む音が聞こえる。
「薬研藤四郎を切ったのは、あいつを折ったのは、俺です。主、どうか俺を刀解してください。」