第7章 燃えて灰になる
「主、申し訳ありません」
手に持っていた本体を床に置き、彼は手入れ部屋の入り口で頭を垂れた。
男は目を見張る。
今までへし切長谷部が男に謝罪してきたことは何度とあったが、額を床に擦り付け、己の傷など気にもとめず、ここまで悲痛な声で謝られるのは初めてのことだった。
なんと声をかければいいのか分からず狼狽えていれば、重傷を負った歌仙兼定と三日月宗近、中傷を負った和泉守兼定を連れてきた山姥切国広と大倶利伽羅、石切丸が驚いたようにへし切長谷部を見下ろしていた。
そんな周りの様子に気づいていないのか、或いは気づいていて気にしていないのか。
へし切長谷部はなおその姿勢のまま、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「薬研藤四郎が、折れました。」
小さな呟きは、けれど確実に男の耳に届いた。
男だけではない、この場にいた全員が、その言葉を聞いた。