第7章 燃えて灰になる
そうだ、彼にはお守りがある。
お守りが発動するのは、折れてからだ。
折れて初めて、発動する。
小夜左文字たちは薬研藤四郎がお守りを持っていることを知らなかったのかもしれない。
だから、早まって男に伝言をと早馬を寄越したのだ。
今頃は早馬を送ったであろう隊長のへし切長谷部が、しまったと顔を青くしているかもしれない。
男は自分の中で膨らむ希望に、体温が戻ってくるのを感じる。
次の瞬間。
「長谷部!」
男が鶴丸国永に礼を言おうと口を開こうとすれば、へし切長谷部の名を叫ぶ大倶利伽羅の声が本丸中に木霊した。
初めて聞く大倶利伽羅の怒鳴り声のようなそれに、その場は再び緊張に包まれる。
鶴丸国永が神経を尖らせ、男は襖の方へ視線をやる。
その僅か数秒後、手入れ部屋の襖が開いた。
そこに立っていたのは、泣きそうな顔をしたへし切長谷部であった。