第7章 燃えて灰になる
鶴丸国永は、その両手で男の頬を優しく包むようにして覆った。
ぱちり、と男は瞬きをする。
じんわりと伝わるのは、鶴丸国永の熱だ。
自分を見る目は、揺れることなくしっかりと先を見据えている。
鶴丸国永の手の温度と触れている部分が同じ温度になると、彼は男を見て言った。
「大丈夫だ」
「つるまる…」
「大丈夫だ、主。薬研がそう簡単に折れるわけないだろう。」
鶴丸国永の言葉に、男は僅かな可能性を見出す。
「まだちゃんと見たわけじゃない。それに小夜たちの見間違いかもしれん。お守りだってもたせてるんだ。」
鶴丸国永の言った言葉を反復するように、おまもり、と男は口の中で言葉を転がす。
彼ら短刀はその性質上傷を負うことが多かったから、男は短刀全てにお守りを渡していた。
お守りに霊力を込めるのは難しく、慣れない彼はいくつか駄目にしてしまったこともあった。
初めて男の手で完璧に作られたお守りは、薬研藤四郎の手に。
まだ今ほど本丸に刀がいなかった頃の話だ。