第7章 燃えて灰になる
ぐるぐると目が回る。
男の顔は血の気を失い、気の毒なほど白くなっていた。
だって、薬研が折れたなんて。
どうプラスに考えようとしたって、思い浮かぶのは最悪の結果。
手が震える。
心臓が痛い。
息がうまくできない。
噛み締めた唇の隙間から漏れる荒い息に、それまで静かに小夜左文字の様子を見ていた鶴丸国永はまずいと彼の手を握った。
「おい、主。大丈夫だ、大丈夫だから、ちゃんと息をしろ。」
男は過呼吸の手前まで迫っていた。
息を吸うばかりで上手く吐き出せていない。
鶴丸国永はとにかく落ち着かせようと、何度も男に呼びかける。
「ゆっくり息を吐くんだ。ゆっくりでいい。」
「ひっ…、っは、……っ、」
右手で男の手を握ってやり、左手で背中をさする。
あまり効果はないかもしれないが、しないよりはましだろう。
「はーっ、はーっ…」
「そうだ、それでいい。」
ようやく息の仕方を思い出した男は、その苦しさから僅かに瞳に涙を浮かべていた。
それも収まり、呼吸状態もいつも通りに戻るのを見届け、鶴丸国永は安堵の息を吐く。
まだ蒼白な顔に、触れている手は驚くほど冷たい。