第7章 燃えて灰になる
黙々と書類を片していく男と、手持ち無沙汰にそれを見守る(どちらかと言えば監視と言った方がしっくりくる)山姥切国広。
大広間で二人でいれば、どたどたと足音を立てて鶴丸国永が走ってきた。
スパンッと勢いよく開かれた襖に、男と山姥切国広は何事かと目を見開く。
「主、早馬だ。小夜が重傷を負ってる。すぐ来てくれ。」
早口にそう言った鶴丸国永の顔は、僅かに焦りが滲んでおり緊張で強張っている。
その言葉を聞いて、男は頷いて立ち上がった。
一瞬にして伝わった緊張に、男と山姥切国広の顔にも緊張が走る。
「国広、手入れ部屋の用意を」
「分かった」
「鶴丸」
「ああ、分かってる」
男が迅速に指示を飛ばすと、それに従って山姥切国広と鶴丸国永が動く。
鶴丸国永に案内され時空移転装置の前にいくと、馬に跨ったままぐったりとした様子の小夜左文字がいた。
意識は辛うじてあるが、恐らく折れる一歩手前。
「あるじ、」
それでも戦場の様子を、託された伝言を主である男に伝えるべく、小夜左文字は口を開く。
音を発した際に傷口に響くのだろう、顔が歪められた。
「重傷、が、さんにん…、中傷が、ふたり……」
ともすれば呼吸音に消されてしまいそうな小さな声で紡がれた言葉に、男は思わずフリーズする。