第6章 薬研藤四郎という刀
そうか、そういうことだったのか。
理解すると同時、男は顔がカッと熱くなるのを感じる。
ここには二人だけではない、薬研藤四郎も三日月宗近もいるのだ。
男としての矜持も、プライドも、鶴丸国永に対する気持ちも、主としての誇りも、全てを踏みにじられた気分だった。
何もこんなところで、そんなことを言わなくてもいいじゃないか。
そんなに俺に好かれるのが迷惑だった?
最初になかったことにしたのは、鶴丸の方だろ。
俺のこと好きでもないくせに、なんでそんなこと言うんだよ。
ああ、ちがう。嫌いだから言うのか。
男は唇を噛み締めた。
この痛みをやり過ごすことなんてできない。
心が悲鳴をあげる。
何より、気持ちを疑われたことが一番傷ついた。
「おい、旦那。言い過ぎだ。」
ひどい顔をしている自覚はあった。
男の様子を見かねた薬研藤四郎が、低い声で咎める。
「ちっ、気分わりぃ」
それに鶴丸国永は舌打ちをして、さっさと去ってしまう。
残された三人の間には、なんとも言えない空気が流れていた。