第6章 薬研藤四郎という刀
男がいざ、とキーボードに手を置いた時。
「わっ!」
「うわあ!」
後ろから鶴丸国永が驚かしにきた。
男がびっくりして背筋を伸ばす様子を見て、鶴丸国永と三日月宗近はけたけたと笑う。
三日月お前わかってただろう…。
男は驚きでドキドキとなる心臓を落ち着かせ、一旦パソコンを閉じた。
「きみは本当に驚かし甲斐があるなあ」
「俺はお前のせいで寿命が縮まるわ。てか鶴内番は?」
「ん?それなら今は休憩中だ」
確か今日は鶴丸国永と一期一振で馬当番を当ててたはずだ、と思い出しながら、休憩中なら問題ないかと思案する。
そうしていれば、突然首に鶴丸国永の手が触れた。
ひんやりと冷たい指先に、男は触れられているのだと自覚した途端かんばせを赤く染めた。
「つ、つるまるさん…?」
緊張で上擦った声が恥ずかしくて、男は助けを求めるように三日月宗近に目を向ける。
そんな男に気づいているであろうに、三日月宗近はのほほんとしたままだ。
その間にも、鶴丸国永はその指で男の首筋をつつとなぞる。
どうやら今朝できた引っかき傷の上を辿っているようで、ヒリヒリとした痛みとともにぞくぞくと断続的な痺れが背筋を走る。