第6章 薬研藤四郎という刀
男が考えていると、首筋にピリとした痛みが走り眉を顰める。
なんだなんだと不思議に思えば、三日月宗近がその答えを口に出した。
「魘されている最中に、自分で掻きむしっておった。俺がもう少し早く起こせばよかったのだが、すまない。」
「いや、お前が謝ることじゃないよ。それにこんなの舐めときゃ治るし」
三日月宗近の泣きそうな雰囲気を感じ取って、男はあっけらかんと言う。
本当に大した傷ではないので、手当てする必要もないだろう。
引っかき傷くらいなら三日あれば治る。
「主、あと一つ気になることがあるのだが…」
「ん?何だ?」
まだ何かあるのかと思いつつ、顔には出さないように心がける。
三日月宗近は言うのを躊躇っているようだった。
その様子に三日月宗近が言い淀むとは珍しいこともあるもんだ、と男はまじまじと見つめる。
しかし直ぐにその様子は消え、次いで三日月宗近が口にした言葉は男に衝撃を与えた。
「主が魘されておる時にな、やげん、と口にしていたのだが、何かあったのか?」