第6章 薬研藤四郎という刀
場面は打って変わって、次は真っ白な世界。
突然の変化に、男は頭痛を覚える。
ここもまた、上も下も、右も左もないところであった。
そして、目の前にはやはり薬研藤四郎が立っている。
先程との違いといえば、薬研藤四郎の表情だろうか。
あの痛々しい笑みはどこにもなく、代わりに男がよく見る薬研藤四郎の表情がそこにあった。
しょうがないな、と呆れながらも慈愛に溢れた笑みだ。
男は何だかそれに無性に安心して、強張っていた筋肉がほぐれていくのを感じる。
やげん、と呼びかけようとした所で暗転。