第6章 薬研藤四郎という刀
言ってから、男はしばし逡巡した。
この先を言ってしまっていいか、分からないのだ。
何か考えがあるのなら、それは薬研藤四郎に任せるべきだと思う。
ただ単純に、以前平野藤四郎が言っていたとおり、戦場へ赴き刀を振りたいだけなら気の済むまで出陣させてやりたいと思う。
でも、そうではなかったら?
ここ最近男が考えるのは、いつもこの先のことだ。
言葉にはできないこの違和感の正体はなんなのか。
男はどうすればいいか分からなかった。
「大将?」
薬研藤四郎が、男を呼びかける。
その美しい紫の瞳がこちらを見上げるのを見て、男は考えるのをやめた。
「なんでもない。わかった、第一部隊に組んどくよ」
「ああ、ありがとう」
それだけ言うと、薬研藤四郎は男に眠る前の挨拶をして部屋を出て行った。