第6章 薬研藤四郎という刀
さて、話は変わるが、今日も今日とて薬研藤四郎は男のもとにやってきた。
彼が男のもとにやってくるのは、決まって皆が寝静まった後だ。
男は夜型人間なためかなり遅い時間まで起きており、薬研藤四郎はそれを把握しているからこの時間に来るのだろう。
そして薬研藤四郎が男のもとにくる目的は一つ。
翌日の出陣部隊に組み込んで欲しいということだ。
「大将、明日も頼む」
薬研藤四郎は眠りにつく際に身につけている着流し姿で、胡座をかきながら男の前に腰をおろした。
男はタイピングしていた手を止め、またかと視線を薬研藤四郎へ移した。
「なあ、薬研。お前ここ最近毎日出陣してるだろ?」
男が躊躇いがちに聞くと、薬研藤四郎は眉を下げて笑う。
その笑い方がどうにも心の中でつっかえて、しかしそれを言葉にする術を男はもたなかった。
「すまん、内番もやるから出陣させて欲しいんだ。」
「いや、別に謝らなくていいけど…。薬研には頼りっぱなしになってるし、やっぱお前がいてくれると心強いからむしろ助かってはいるんだが……」