第6章 薬研藤四郎という刀
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男が薬研藤四郎の逸話を知ったのは、割と最近だ。
歌仙兼定と話していた際に、如何にして自分は歌仙兼定となったのかを聞いたことが、男に影響を与えたのだろう。
『僕はね、主。歴代兼定でも随一と呼ばれる二代目、通称之定の作さ。名前の由来は三十六歌仙から。風流だろう?……まあ、元主が手打ちにした人数が36人だったから、と言うと、みんなどういう顔をしていいかわからなくなるようだけれど』
男はその言葉を聞いて、確かにどんな顔をすればいいか分からんと思った。
歌仙兼定が男の顔を見て笑っていたから、ずいぶんと間抜けな顔をしていたのだろう。
他にも、本丸にいる刀剣男士は何かしらの逸話や理由があって名を持っているらしい。
燭台切光忠や三日月宗近なんかは顕現してすぐに教えてくれたから知っていたが、そういえば他のものはあまり知らないなと思い至り刀剣図鑑なるものを買った次第である。