第6章 薬研藤四郎という刀
別に何も薬研藤四郎の出陣が多いことがダメというわけではない。
むしろ助かっているしありがたいのだが、何しろ練度が成熟してから一週間毎日出陣するということは今回が初めてであったのだ。
しかも全て男に直接頼みに来ている。どうか自分を出陣させてくれと。
男の悩みはそこにあった。
ただの自分の心配しすぎなだけならいいのだが、そうではない気がする。
男が再び思考に耽っていると、平野藤四郎から声がかかる。
「主君、確かに出陣が今までより多いのは気になりますが、薬研兄はもともと戦場育ちです。ただ戦場に行きたかったというのも考えられないでしょうか?」
「そっか、そうだよなあ…。やっぱ刀だもんな、そりゃあ戦いたいか。」
平野藤四郎の言葉に男はなるほどと頷いて、それから頭を撫でてやる。
「ありがとう、平野。もう少し様子を見てみるよ。」
男は平野藤四郎から書類を受け取ると、本日の雑務を終えた。
ここからは暫くの間平野藤四郎と男のお喋りタイムだ。
内容は主に平野藤四郎が皇室にいた頃の話で、その話の中には一期一振や鶴丸国永、まだこの本丸にはいない鶯丸もでてくる。
男は平野藤四郎の口から語られる鶴丸国永の話が好きだった。